2017/11/24
この本をただのキューバ旅行記だと思って読むと…
痛い目みるよっ!
ってことだけは最初に言っておきましょう。
若林さんの文体が、前作(という位置づけではないと思うけども)よりもすごく小説的というか、情景描写や感情表現が…
ええい、そんな小難しいこと抜きにして。
若林正恭 著「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」
感想。
切ない物語でした。
軽い気持ちで読んだら、読後、久々に夜中の街を歩きたくなりました。
若林さんが以前のエッセイ本で書いていたような、
公園のベンチに座って、空のバケツに手を入れて、物思いにふける。(ちょっと表現は違ったと思いますが…)
ような、そういういわゆる中二病的な感覚におそわれました。
おそわれたんだけど、なんだかそれが心地いいという。
不思議な感覚で、この記事を書いています。
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資本主義と社会主義
本のタイトルがズバリですが、資本主義と社会主義の対比が一つテーマにあって、どっちが幸せとは一概には言えないし、ジャッジすることでもない。
けど、何か日本社会に違和感を持っているのは事実で。
個人的には、若林さんの本を読んで20代を思い出しました。自分が感じていた「何かおかしいんじゃね?」っていう感覚。
よく分からないけど、苦しい。
この苦しみの原因は、社会構造にあるのかも?と思って、格差社会や貧困問題、労働関係の本を読み漁っている時期がありました。
今やそれもどこ吹く風になってしまいましたが、正直に言って、あの頃には戻りたくありません。
とても辛かったので。
だから若林さんの本は、読んでいてちょっと苦しくなるときもあるんだけど、絶妙なさじ加減で脱力感ある文体なので、基本は面白く読めました。
ただただ、一番不思議なのは…
売れっ子芸人
オードリーを知らない人って、日本では一部のテレビを全く見ないって人を除けばいないと思います。人となりは知らなくても、見たことはあると思うんですよね。
そんな前置きしなくても、オードリーが売れっ子なのは周知の事実です。
若林さんはMCもよくやっているし、間違いなく芸人さんの中では成功してますよね。
それがなぜ、こういう問題意識というか、資本主義(厳密には新自由主義)社会に疑問を持たれるのか、ちょっと不思議です。
前のエッセイも好きでよく読んでいましたが、20代のころにそういう思想に影響を受けたらしいからその名残?また、ご自分でも書いていますが、自意識過剰・中二病の気質だからでしょうか?
そういう感覚を持ちながら、芸能界の競争社会で生きていて、しかも実績出して成功しているって、めちゃくちゃすごいことだと思います。
自意識過剰
僭越ながら感じたのは、若林さんがいる芸能界とか周りの人たちの空気、「辛気臭いことはイケてない」っていう雰囲気のが強いのかなー?ということ。
辛気臭いっていうか、中二病的なこと、かな?
いわゆる、中二病的なものの感じ方はダサいっていう価値観が、すごく強いんじゃないかなと思いました。若林さんのいる芸能界特有のものなのか、新自由主義の経済合理主義?ゆえなのか、単なる気質なのか、はたまたまったく関係ないのか分かりません。
ここで言う中二病は、根本的なことに疑問を持つこと、例えば「人はなぜ生きるか」とか「社会はなぜ平等じゃないのか?」とか、そういう感覚です。
そんなん深く考えてもしょうがない。
「人生エンジョイしようぜ!」
って、グイグイ行ける方が強くて、ノリがいい方が強い。
今はそういう傾向があるような気がします。私もたまに感じますが、深く考える勢は、分が悪い。
だって、深く考えてもお金にならないから。
もちろん考える対象によりますが、こと人生を深く考える勢は、中二病とか、よりシリアスになるとメンヘラとか、とにかくレッテルのような言葉でくくられます。(それも妄想にすぎない場合もありますが)
私は、人生を深く考えることは、すごくエネルギーを使うので今はあまりしたくないし、お金も欲しいし、それなりにいい暮らしもしたい。
だけど若林さんの本を読んで、人生を深く考える中二病的な感覚は、ずっと持っていたいなぁと思いました。
売れっ子芸人のオードリー若林でも、そんな風に感じるんだ
成功しているすごい人でも、そういう感覚を持っているんだっていう事実が、とても心強いなぁと思いました。
今はあまり考えないけど、時たま人生を深く考えて、悩んでしまうこともあります。それはすごく非生産的な時間で、何か罪悪感にとらわれちゃったりもして…
早くそこから抜け出さないと!と、もがいていることがあります。
そういう時期って、じんわり辛い。ぼんやーり辛い。
でも、生き馬の目を抜く超競争社会で生きている売れっ子芸人さんでも、そういう感覚があるんだなって思うと、何か楽になります。
オードリーのオールナイトニッポンが、深夜ではすごい聴取率で人気あるらしく。たまに聴いています。(リトルトゥース。詳しくは本でもラジオでも)
そのジングル(CM明けにBGMに乗せて一言喋るパート)が好きなんですが、相方の春日さんが、
「自分を肯定しろっ!」
ってエコーかけて叫ぶジングルがあります。
中二病でも自意識過剰でも、人生を深く考えても、非生産的で罪悪感を感じても…
それが自分ですから。
だから、自分に愛想をつかさず、やんわり自分を肯定しつつ、楽に(Take it easy)付き合っていこうと思った…っていうのが、この本を読んだ感想まとめですね。
まぁでもこの本はそれだけじゃなくて、ある重大な物語が最後の方で語られます。
え?若林ってそうだったんだ!と、ちょっと驚きました。で、泣きそうになりました。
何か感じるところがあれば、読んでおいて損はないでしょう。
自分を肯定しろっ!